最高裁判所第一小法廷 昭和23年(れ)1478号 判決 1949年2月17日
主文
本件上告を棄却する。
理由
各被告人の辯護人森武喜、同榊原展成上告趣意第一點について。
しかし、被告人が公判廷で身體の拘束を受けた事実の有無は、公判調書の記載要件でないこと舊刑訴第六〇條(新刑訴第四八條刑訴規則第四四條參照)の規定に照し明白であるから所論のごとく必ず公判調書にこれを明記しなければならぬものと言うことはできない。そして所論舊刑訴第六四條(新刑訴第五二條參照)の規定は、公判期日における訴訟手續で公判調書に記載されたものは、公判調書のみにより證明すべく、これが反證を許さないと言う趣旨であって、記載なき手續の有無又は適否の證明に關する規定ではないから、公判調書に被告人の身體拘束の有無につき記載を缺いたからと言って公判調書を無効だといえないのみならず、これを以て直に被告人の身體を拘束したものともいえない。そして本件では被告人の身體を拘束した事実を認むべき資料は何等存在しないのであるから所論は採るを得ない。(その他の判決理由は省略する。)
よって舊刑訴第四四六條に從い主文のとおり判決する。
この判決は裁判官全員一致の意見である。
(裁判長裁判官 齋藤悠輔 裁判官 沢田竹治郎 裁判官 岩松三郎)